200年残したい企業

FOR200YEARS

はじめに

安倍晋三首相が2016年9月に内閣官房に「働き方改革実現推進室」を設置し、働き方改革の取組を提唱してからというもの、『働き方改革』という言葉が毎日のように各メディアを通して耳目に触れるようになりました。労働環境の改善は、企業だけでなくいまや日本全体に関わる課題となっております。

当グループでは、これに先駆けて2009年より新卒採用に力を入れ始め、現在では従業員65名(男性45名・女性20名)のうち、35%以上を占める23名(男性11名・女性12名)が新卒入社の社員となり、建設業の新たな時代を支える要となっております。 創業明治5年の弊社は、おかげさまで今年152周年を迎えました。目指す「200年企業」まで残すところあと48年となり、現在弊社が力を入れて取り組んでいることは『健康経営』です。

今の取り組みがすぐに成果として現れるかどうか分かりませんが、環境に対応し順応しながら企業文化や脈々と続く企業の生き様を若い世代にDNAとして残しつつ共に育んでいくことが、中小企業である弊社に課せられた使命であると考えております。

『健康経営』とは

弊社では、独自の思想により『健康経営』を取り入れております。「健康」であること、それはつまり「心」と「身体」の両方が健康であることを意味します。社員の健康は会社の健全につながり、会社の健全はお客様や協力業者の方々の健康・健全に繋がります。では、社員の健康はどこから生まれるものでしょう?それはお客様や協力業者の方々の健康であり、社員の家族の健康・健全であると考えます。弊社の『健康経営』は、この循環から生まれているのです。

働き方を考える

前述の通り、弊社では新卒入社の若い社員や女性社員が多くなるにつれ、その活躍の場は年々拡大しております。次代を担うこれらの社員が働きやすい環境となるよう制度も多様化して参りました。

半社半学制度

読んで字のごとく半分「社員」半分「学生」を認める制度です。奨学金返還のトラブルについてニュースで取り上げられることが多い昨今、家庭の事情等で大学進学を諦め高卒で就職という道を選ばざるを得なかった社員や、一度は就職したものの再度今の業務に対する見識を深めることを希望している社員に対して、勤務時間外に大学、短期大学、専門学校等で学業を修めることを認め、申請により費用の全額を会社が貸し付ける制度です。

この貸し付けた費用は、入社後10年以上の勤続を以って、半額を返済免除とします。 現在は、勤務しながら国立埼玉大学に通っている社員が1名、専門学校に通っている社員が1名、半年課程の専門学校を卒業した社員が1名おります。この制度は、短時間正社員制度と併用も可能ですので、日中に集中して仕事を終わらせ、夕方から夜にかけては学校で幅広い年齢層や職種の方と交流を持つことにより、気分のリフレッシュにもなっているようです。

自主企画研修旅行制度

入社5年目以降の社員に対して、自分の興味や関心がある場所に赴き見識を広くすることや、自分の行きたい場所に行くことで日常から離れ、気分転換をし、心を豊かにして今後の業務への活力とすることを目的とした制度です。

この制度は事前に研修旅行計画書を提出することにより、勤続年数×規定額(今年度は7000円)を会社から補助しております。研修旅行終了後にはレポート提出が必須となっておりますが、社員同士がグループになり一緒に研修旅行に行くことによりコミュニケーションの一環となったり、自費で家族を同行させることにより家族との時間が増え気分のリフレッシュになったりと、社員には人気の制度です。研修旅行先は、伊勢志摩・金沢・軍艦島・黒部ダム・沖縄・ヨーロッパ(イタリア・フランス・スペイン・チェコ・ハンガリー・クロアチア)・ベトナム等様々です。

マイ・アニバーサリー休暇制度

2012年に委員会として発足した『頑張る女性を支援する会』は、2016年に『女性が輝く職場つくり委員会』と名を変え、「職場環境改善」「有給休暇取得」「残業時間削減」「イクボス・イクメン」等の啓蒙活動や各種制度の充実など、様々な活動をして参りました。

年に一度、有給休暇を3日以上連続で取得し、ワークライフバランスの実践と有給休暇の取得を推奨する「マイ・アニバーサリー休暇制度」もその一つです。こちらは社員同士の協力体制を構築し、生産性の向上を目的とするものですが、他の制度と違い、休暇取得の申請をする際には申請書に所属部署内のメンバー全員の承認捺印が必要なところが面白いところかもしれません。

シェーンカムバック制度

少々お年を召した方なら馴染みのあるセリフかもしれません。1953年の西部劇「シェーン」で有名になった「シェーン!カムバック!!」から命名した制度です。

その名の通り、一度退職した社員が退職前に培った業務経験を活かして再び勤務したいという意志があった時に再就職できる制度です。対象者は退職時に3年以上勤務していた社員と限定されますが、妊娠や子育て・ご主人の転勤等でやむなく退職した社員が、条件が整った時に再就職してくれますので即戦力として大いに期待するところです。現在は、1名の女性社員が2人目の出産を終え、再就職して子育てをしながら活躍しております。

親子出勤制度

育児中の社員が安心して就業できるように、また育児休暇を取得した社員がブランクを少なく復帰できるようにするため、子どもを会社に連れて親子で出勤し、育児しながら就業できる制度です。

親と一緒に出勤してきた子どもは、親の近くでお絵描きなどして遊んだり、社内に常備してあるベビーベッドで昼寝をしたり、社長をはじめとする周りの社員のフォローで一緒に遊んだり…と会社で過ごします。

子どもがいない社員も子育てを身近に感じることができますので、戸建住宅建築ご検討中のお客様へのご提案の際など役に立っています。 尚、対象は女性社員だけではないので、男性社員も会社に子どもを連れてくることにより「お父さんが働く姿」を子どもに見せる事が可能です。

  • 親子出勤制度で出勤(?)した
    子と遊ぶ社長

  • 時には「お父さんの会社見学」も

  • パパになる修行中!?

社用携帯電話・勤怠管理アプリの導入

直行直帰が多い建設業である弊社は、現場作業員の残業時間や休日出勤・振替休日取得状況・有給休暇取得状況の把握・管理がしづらいという問題がありました。そこで弊社では社用のスマートフォン(IPHONE・IPAD)約100台導入し、パート社員を含む全従業員に貸与しております。 スマートフォンに別途契約の出退勤アプリを入れることにより、どこの現場に直行直帰してもその場で出退勤を打刻することが可能となり、前述の問題の把握・管理も可能となりました。

  • 出退勤は各社員の
    スマートフォンで打刻可能です

  • 定時を1時間過ぎると自動的に
    アプリから退勤勧告メールが届きます

また、IT機器に頼るだけでなく、社員お互いの状況が「見える化」出来るよう、休日出勤状況や休暇取得状況を各部署に貼り出すなどの工夫もしております。尚、社用の携帯電話では、BCP(事業継続計画)対策として緊急災害時に備え、安否確認のためのアプリも導入しておりますので、被災時には即時に社員、またそのご家族の状況を確認できます。

その他の制度

この他にも弊社には様々な独自の制度や働き方があります。

自主異動申請制度
※自主的な既存部署への異動
自主企画申請制度
自主的な企画部署創設および異動
親睦推進等制度
2ヶ月に一度世帯主ノー残業デー取得推奨。
世帯主ノー残業デー取得者又は社員同士のコミュニケーションのための食事会の際には、申請により会社から補助金を支払う
学費助成制度
規定の資格取得のために通学した社員に対し、合格を条件として学費を助成する
退職者推薦書制度
やむなく退職した社員に対し、次の就職を支援するために推薦書を発行する
「私、定時前に帰ります」制度(MASUKI版男性育休制度)
夫婦が育児を分担できるよう、予め申請した日に関して定時前に帰宅(土曜日は在宅勤務)することを許可する制度

などが一例です。これらの制度や規則・諸条件については、毎年作成している「マスキガイドブック」に詳細が記載されております。「マスキガイドブック」には就業規則や規定・制度の他に、翌年末までの社内イベントや会議の予定、全社員の誕生日やプロフィール、5年先までの数値目標等も記載されており、この一冊があれば増木工業のほぼ全てが分かる内容となっております。

  • マスキガイドブックは、管理部総務課が毎年発行します。増木工業のほぼ全てが記載されて いるので制作には半年もの時間が必要です

現場での働き方改革

最初に述べました通り、現在弊社には30名の女性従業員がおります。 施工管理職として現場へ出る社員だけでなく、現場事務として現場事務所に常駐する社員、安全パトロールや品質向上パトロール・設計監理などで現場へ向かう社員など、女性社員が現場へ進出する機会が増えて参りました。同様に、協力業者の方も女性が増えて参りました。

それに伴いまして、各現場では可能な限り「女性専用トイレ」を設置するように心掛けております。現場の仮設トイレというと今までは「汚い」というイメージでしたが、現場に勤務する女性が気兼ねなく気持ちよくトイレに行くことが出来るよう囲いをつけたり、トイレ内の小物に女性ならではの工夫をしたり、更衣用に足下ステップが付いているトイレを設置する等の配慮もしております。

社外への発信

弊社での様々な取り組みをメディア等で取り上げていただくことにより各方面から以下のような 有難い賞を頂戴しております。

平成25年1月 埼玉県多様な働き方実践企業認定証(シルバー)
平成28年1月 彩の国経営革新モデル企業指定書
平成28年2月 さいたま輝き荻野吟子賞(いきいき職場部門)
平成28年8月 埼玉県シニア活躍推進宣言企業認定証
平成29年2月 埼玉県多様な働き方実践企業認定証(ゴールド)
平成29年3月 全国健康保険協会埼玉支部 健康宣言証
平成29年8月 日本健康会議 健康経営優良法人認定証 (中小規模法人部門)
平成31年3月 平成30年度 経済産業省新・ダイバーシティ経営企業100選
令和元年10月 GOOD DESIGN AWARD 2019年度受賞
令和元年12月

第7回埼玉県環境住宅賞協議会会長特別賞受賞

住まいの環境デザインアワード2020 審査員特別賞

住まいの環境デザインアワード2020 東京ガス賞

ほか、各所から講演の依頼等も増えて参りました。 最新の表彰については、HP【認定・表彰】にてご覧ください。

  • トイレに入りやすいよう囲いを設置

  • 『女性専用』トイレを設置

  • 女性専用トイレには、更衣用のステップがついています。気持ちよく使えるよう小物等にも気をつかっています。

人材について

現場業員の高齢化・少子高齢化・生産年齢人口の減少に伴い弊社が企業として今やるべきことは、縁あって入社した若い人材をいかに育て、辞めずに末永く働ける環境を整えられるかを考え実践することです。

弊社では、若手の社員には必ず「共育」担当者を配置しております。「教育」ではなく、敢えて「共育」担当者としています。担当者となる先輩社員は自分の価値観や固定観念を押し付けながら 仕事を「教える」のではなく、時代の流れ、環境に対応し順応し、これからの時代を担うDNAを「共に」「育てていく」また「共に」「育っていく」ことを目的としています。 「共育担当者」という言葉には、そのような想いが込められているのです。

今後について

かねてより弊社では従業員に対して「職住近接」を提唱して参りました。職場と住居が近接していることは会社にとっても従業員にとってもメリットだらけです。

「職住近接」を実現するために会社の周辺には社宅が数件あります。また、弊社で管理しております賃貸物件が沢山あります。これらを「社宅規定」により割安で従業員に賃貸することは、従業員の通勤ストレスを削減するだけでなく、会社としても遠方から通勤する社員の交通費の削減等のメリットがあり、賃貸物件に至っては身元が知れた弊社の社員が居住することによりオーナーさんも安心できるという、一石二鳥ならぬ一石三鳥となります。

これからの時代に人材不足を解消すべく、育児や介護・雇用による地域発展のために中小企業の役割として弊社が行なうべきことは、以下の通りであると考えております。

  1. ・高齢者の雇用
  2. ・女性の雇用
  3. ・障がい者の雇用
  4. ・ヤンチャの雇用

これらを実現する第一歩として、平成30年1月14日に満65歳の誕生日を迎え、定年退職となる社員を嘱託契約として再雇用致しました。(令和6年6月現在6名になりました)これまで長期間に亘って積み上げてきた実績、顧客との信頼関係を最大限にいかして活躍していただけるものと期待しております。

また70期には「在宅勤務制度」を導入し、自分や子どもの病気、育児や介護等で数日間または長期間に及んで出勤することが不可能な際に、これまでの経験と知識を活かして在宅で業務ができる体制を整えました。72期には男性社員の積極的な家事・育児の参加、共働き世帯のワークライフバランスを応援する、増木版男性育休制度「私定時前に帰ります」を制定しました。また、コロナ禍には緊急事態宣言直後に「新型コロナウイルス等対策規則」を制定し、安心して自宅で療養できることにより社内での感染拡大を防止致しました。このように環境が変わっても退職することなく、末永く働く事を可能にする制度を毎年充実させております。

まだプロジェクトを始動したばかりですので詳細についてはこれから検討していく段階ですが、どこの業界でも生産性の向上・人材不足が叫ばれる今日この頃、この新たな働き方改革の制度は、必ずやこれからの時代に欠かす事のできない制度になると確信しております。

これまで「休日がなくて当たり前」「労働時間が長くて当たり前」「3K(きたない・きつい・給料が安い)が当たり前」であった建設業ですが、縁あって入社した老若男女いる社員のワークライフバランスを保ちながら、会社は社員が培ってきた実績を生かして企業として存続する。

これが、お客様に「200年残したい企業」と言っていただける企業であるための必須条件と考え今後も邁進していきたいと存じます。

令和6年6月1日
株式会社増木ホールディングス
代表取締役 増田敏政